数学してよアライㄜん

アライㄜんが数学をしないで数学について書くのだ

デデキント切断による実数の構成・その演算が完備順序体をなすことの証明・そしてコーシー列との関係

デデキント切断で実数を構成した後に順序と演算を入れ、完備な順序体にしたのだ。そのあと有理コーシー列との関わりを見たのだ。完備順序体やコーシー列の収束などの証明を全部書いたから文字数は多いけど見ていってほしいのだ。優しい証明が多いから自明だと思ったら飛ばしてもらって構わないのだ

有理数

今回は急ぎだから有理数が手元にあるのだ。実は自然数の組を同値類で割って整数を作り、整数の商体とかを使って話をするんだけど、割愛なのだ

まず今回使う有理数のちょっとした性質や定義を載せておくのだ。四則演算と順序関係がうまくできている(順序体というのだ)ことは認めるのだ

アルキメデス

$z\in\mathbb{Q}$ に対してある $n\in\mathbb{N}$ が存在して $z< n$ なのだ

$z=\dfrac pq,\ p\in\mathbb{Z},\ q\in\mathbb{N}{\small\setminus\{0\}}$ に対して $n=|p|+1$ と取ればいいのだ

コーシー列

有理数列 $(a_n)_{n\in\mathbb{N}}$ がコーシー列であるとは以下をいうのだ:
$\gdef\ep{\varepsilon}\forall \ep>0,\ \exists N\in\mathbb{N},\ \forall n,m\geq N,\ |a_n-a_m|<\ep$

数列の収束

有理数列 $(a_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が $a\in\mathbb{Q}$ に収束するとは以下をいうのだ:
$\forall \ep>0,\ \exists N\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N,\ |a_n-a|<\ep$

有理数の悲劇

この有理数だけで色々な議論をするのは好ましくないのだ

コーシー列が収束しないのだ

例えば、$a_0\coloneqq 1,\ a_{n+1}:=\dfrac{a_n}2+\dfrac{1}{a_n}$ と置いて実数で考えれば $\sqrt{2}$ に収束するのだ。でも、有理数の中では収束しないのだ。実数列としてコーシー列であれば有理数でもコーシー列ではある*1のに、有理数の中では収束してくれないのだ

連結じゃないのだ

位相をやっているけものだけに話をするのだ。連結性って大事なのだ。同相性の確認とかにとても便利な性質なのだ。
$\mathbb{Q}$ の開集合 $A\coloneqq\{z\in\mathbb{Q}\mid z<\sqrt{2}\}$ に対して
$A^\complement=\{z\in\mathbb{Q}\mid z\geq\sqrt{2}\}$ を考えると、
$\partial A=\{z\in\mathbb{Q}\mid z^2=\sqrt{2}\}=\emptyset$ であるから
結局 $A^\complement=\{z\in\mathbb{Q}\mid z>\sqrt{2}\}$ となってこれも開集合なのだ。よって $\mathbb{Q}$ は非連結なのだ

無理数 $\sqrt{2}$ を使って話したけど、$A=\{z\in\mathbb{Q}\mid z^2<2 \lor z<0\}$ とも書けるから本質的な問題ではないのだ

切断

一旦実数のことは忘れて欲しいのだ。アライㄜんたちは有理数しか触ったことがなくて、対角線の長さなんか求めたこともない無垢なけものたちなのだ

有理数を数直線上で左右に分ける、って操作を考えて、これを切断と呼ぶのだ。すると有理数がちょっとおかしいことがわかってくるのだ

$\mathbb{Q}$ の部分集合 $A, B$ の組 $(A,B)$ が切断であるとは、以下を言うのだ:

  • $A,B\neq\emptyset$
  • $^\forall a\in A,b\in B,\ a< b$
  • $A\cup B=\mathbb{Q}$

見ての通りなのだ。綺麗に $A$ と $B$ で左右に $\mathbb{Q}$ が分かれてるのだ

例えば有理数を $1$ 以降と $1$ 以下に分けたものとかがそうなのだ:<$>A\coloneqq\{z\in\mathbb{Q}\mid z< 1\}\\B\coloneqq\{z\in\mathbb{Q}\mid z\geq 1\}<$>


きちんと分かれていることがわかると思うのだ。そして $B$ の左側に $1$ がある ($\min B=1$*2 ) ことがわかるのだ。逆に $A$ の右側には明確な端っこがないことがわかるのだ:

有理数の稠密性というものがあるのだ。有理数二つを持ってきたらその間にも有理数がある、という性質なのだ
例えば、$a=\max A$ をとってきたとしたらこの稠密性を使って矛盾が導けるのだ。見ててほしいのだ

$1$ も $a$ も有理数で $a<1$ だから、$a< z<1$ となるような $z$ (具体的には $z=\frac{a+1}2$) が存在するのだ。すると $z<1$ だから $z\in A$ だけど、$a< z$ だから $z$ の最大性に矛盾するのだ

基本的に有理数をもとに切断すると $A,B$ のどちらかの端っこにその有理数がくっつくのだ。今 $A$ 側の切り口は触れない($\max A$ がない)けど、$B$ 側切り口の手触りが有理数ですべすべ($\min B=1$)なのだ。最高なのだ

ではもうひとつの切断:

<$> \begin{aligned} A&\coloneqq\{z\in\mathbb{Q}\mid z^2< 2 \lor z< 0\}\\ B&\coloneqq\{z\in\mathbb{Q}\mid z^2 >2 \land z >0\}=A^\complement \end{aligned} <$>

を考えてみるのだ。$A^\complement$ は高校で習う $\overline A\coloneqq\mathbb{Q}\setminus A$ のことなのだ

これは確かめればちゃんと切断だとわかるのだ。でも、有理数で切ったのとは違って $A$ の上の方にも $B$ の下の方にもその有理数が見当たらない($\max A$ も $\min B$ も存在しない)のだ。$A$ と $B$ の間にある切り口の数には有理数の世界からは触れることすらかなわないのだ

切り口の数の場所は(そりゃ切ってるから)わかるのに、その数は絶対に触れられないのだ

アライㄜんとデデキントは逆転の発想で、切り口そのものを数だと思い込むことにしたのだ。だって切り口はあるんだもん

切り口が触れるときには $A$ の方か $B$ のどちらか一方だけ、端が有理数なのだ:

$a=\max A,\ b=\min B$ として矛盾を導くのだ。切断の性質より $a< b$ なのだ

すると $c=\frac{a+b}2\in\mathbb{Q}$ がとれて $\max A=a< c< b=\min B$ となるので、$c\notin A,\ c\notin B$ すなわち $c\notin\mathbb{Q}$ となって矛盾なのだ

切断を数として扱いたいのだ。例えば、有理数で切ったような切断と有理数に一対一対応があるとうれしいのだ。でも有理数で切断したとき、端が右にあるときと左にあるときがあるから($\max A$ があるか $\min B$ があるか)扱うのがめんどくさいのだ

今回は右側に端がある ($\min B$ がある) 切断を有理数として扱うことにして、どっちも端っこがない切断を無理数みたいに扱うのだ。右側断片に端がある有理数とどっちにも端がない無理数、すなわち左側の断片に端がない切断だけを扱えばいいのだ

実数の構成と特徴付け

よって実数を次で定義するのだ:

$\mathbb{R}\coloneqq\{(A,B):$ 切断 $\mid\ \max A$ が存在しない $\}$

そうすれば有理数を切って現れなかったものが次々と数に見えてくるのだ。やったのだ

集合の組の集合、なんて不思議かもしれないけど、今は静かに受け入れてあげてほしいのだ

有理数で $\mathbb{Q}$ を切断したものを実数に対応させるのだ:

$a\in\mathbb{Q},\ \gdef\si\sigma\si(a)\coloneqq(\{z\in\mathbb{Q}\mid z< a\}, \{z\in\mathbb{Q}\mid z\geq a\})\in\mathbb{R}\gdef\zero{\sigma(0)}\gdef\one{\sigma(1)}$

この $\si$ は有理数を実数の世界へ埋め込むのだ

あといちいち $x=(A,B)$ って書くのがまどろっこしいから次を定義するのだ:

$\gdef\A{\textup{A}}\gdef\B{\textup{B}}x=(A',B')\in\mathbb{R},\ \A(x)\coloneqq A', \B(x)\coloneqq B'$

切断の性質から以下がわかるのだ:

$\B(x)=\A(x)^\complement$

$\A(x)\cap\B(x)=\emptyset$ を示せばいいのだ。$\A(x)\cap\B(x)\neq\emptyset$ を仮定して矛盾を導くのだ

仮定より $z\in\A(x)\cap\B(x)$ がとれるのだ。とくに $z\in\A(x),\ z\in\B(x)$ だから切断の定義より $z< z$ となって矛盾なのだ

$a\in\A(x),\ a'< a\Rightarrow a'\in\A(x)\\b\in\B(x),\ b'> b\Rightarrow b'\in\B(x)$

$a'\in\B(x)$ を仮定すると $a\in\A(x)$ より $a< a'$ となって矛盾なのだ

$\B(x)$ についても同様に証明できるのだ

あとこれはある意味自明だけど重要な性質なのだ:

挟み撃ち

$x\in\mathbb{R}$ と任意の $r\in\mathbb{Q}, r>0$ に対して
$a+r\in\B(x)$ となるような $a\in\A(x)$ が存在するのだ

これは $\max\A(x)$ は存在しないけどそれに近い有理数ならいくらでも存在することを言っているのだ。なぜなら、$r=0.000000001$ みたいにとても小さく取っても $\A(x)$ と $\B(x)$ の間をまたぐ $a\in\A(x),\ a+r\in\B(x)$ がとれるからなのだ。では証明してみるのだ:

まず任意に $x\in\mathbb{R}$ と $r\in\mathbb{Q}, r>0$ をとるのだ

また、$\A(x),\B(x)\neq\emptyset$ より有理数 $c\in\A(x),\ b\in\B(x)$ をとってくるのだ。切断の定義より $b-c>0$ がわかるのだ

このとき有理数のアルキメデス性によって、$\frac{b-c}r$ より大きい自然数 $N$ が存在するからそれをとってくるのだ

有理数列 $a_n\coloneqq a+\dfrac nN\cdot(b-c)\quad(0\leq n\leq N)$ を定義するのだ

このとき、ある $0\leq n\leq N$ が存在して $a_n\in\A(x)\land a_{n+1}\in\B(x)$ が成立するのだ

どんな $0\leq n\leq N$ をとってきても $a_n\in\B(x)\lor a_{n+1}\in\A(x)$ と仮定して矛盾を導くのだ

数学的帰納法を使えば $a_n\in\A(x)$ がわかるのだ:
$n=0$ のとき、$a_0=c\in\A(x)$ なのだ

一般の $n\geq 1$ で $a_{n-1}\in\A(x)$ と仮定すれば、最初の仮定 $a_{n-1}\in\B(x)\lor a_n\in\A(x)$ とあわせて $a_n\in\A(x)$ となるのだ

よってすべての $n$ について $a_n\in\A(x)$、とくに $b=a_N\in\A(x)$ となって矛盾なのだ

このとき、$a_{n+1}-a_n=\dfrac{b-c}N< r$ だから $a_n\eqqcolon a$ とすれば
$a\in\A(x)\land a+r\in\B(x)$ なのだ

これは実数の特徴づけ*3をするのだ:

実数の特徴づけ

$A\neq\emptyset,\mathbb{Q}$ が以下の性質をもつときまたそのときだけ、$(A,A^\complement)\in\mathbb{R}$ なのだ:
$a\in\mathbb{Q},\ a\in A\Leftrightarrow \exists a'\in A,\ a< a'$ ($a$ が $A$ の元になるということは、より大きい $A$ の元 $a'$ があるということなのだ)

まず、$x\in\mathbb{R}$ に対して $\A(x)$ がその特徴づけをみたすことを示すのだ。
$a\in \A(x)\Leftarrow \exists a'\in\A(x),\ a< a'$ なのだ:

$\exists a'\in \A(x),\ a< a'$ とするのだ。すると先ほど証明した $\A(x)$ の「より小さい有理数を全て含む」性質によって $a\in\A(x)$ なのだ

$a\in A\Rightarrow \exists a'\in\A(x),\ a< a'$ を示すのだ:

$a\in A$ とするのだ。$\nexists a'\in \A(x),\ a< a'$ を仮定して矛盾を導くのだ

$\nexists a'\in\A(x),\ a< a'$ すなわち $\forall a'\in\A(x),\ a'\leq a$ とすれば $a=\max\A(x)$ となって矛盾なのだ

次に特徴づけをみたす $A$ が実数を定義できることを示すのだ。どんな $a\in A$ を取ってきても仮定より $a< a'$ となる $a'\in A$ が存在するから $\max A$ は存在しないのだ
さらに、$B\coloneqq A^\complement\neq\emptyset$ とするのだ。当然 $A\cup B=\mathbb{Q}$ なのだ

さらに $a\in A,\ b\in B$ をとれば、$b\notin A$ と仮定より $\forall a'\in A,\ a'\leq b$ なのだ。$a'=a$ とすれば $a\neq b$ であるから $a< b$ が成立するのだ

よって $(A, A^\complement)$ は $\max A$ をもたない切断、すなわち実数になるのだ

次の正の実数の特徴づけは乗法の定義で役立つのだ:

正の実数の特徴づけ

$\emptyset\neq A\subsetneq \mathbb{Q}_{>0}$ が次をみたすときまたそのときだけ、$(A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0}, (A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0})^\complement)$ が正の実数になるのだ:
$a\in\mathbb{Q}_{>0},\ a\in A\Leftrightarrow \exists a'\in A,\ a< a'$ ($a>0$ が $A$ の元になるということは、より大きい $A$ の元 $a'$ があるということなのだ)

ここで $\gdef\Ap{\A_{+}}\gdef\Qp{\mathbb{Q}_{>0}}\Qp\coloneqq\{z\in\mathbb{Q}\mid z>0\}$ なのだ。また、$x>\zero$ に対して $\A_{+}(x)\coloneqq\A(x)\cap\Qp$ と置くのだ

$A$ が正の実数の特徴づけをみたすとすれば、$A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0}$ は実数の特徴づけをみたすのだ

$a\in A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0}\Rightarrow \exists a'\in A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0},\ a< a'$ を確かめるのだ:

$a\leq 0$ の時はどんな $a'\in A$ を取ってきても $a< a'$ だから大丈夫だし、$a>0$ のときは $A$ が正の実数の特徴づけをみたすから $\exists a'\in A,\ a< a'$ で、結局 $\exists a'\in A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0},\ a< a'$ なのだ

$a\in \mathbb{Q},\ \exists a'\in A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0},\ a< a'\Rightarrow a\in A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0}$ を確かめるのだ:

もちろん $a\leq 0$ なら $a\in\mathbb{Q}_{\leq 0}$ だから $a>0$ のときを考えるけど、
$a'>a>0$ だから正の実数の特徴づけより $a\in A$、
よって $a\in A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0}$ なのだ

さらに $\A(\zero)\subsetneq\mathbb{Q}_{\leq 0}$ より $\zero<(A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0}, (A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0})^\complement)$、
よって $(A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0}, (A\cup\mathbb{Q}_{\leq 0})^\complement)$ は正の実数なのだ

$x>\zero$ なら $\Ap(x)$ は正の実数の特徴づけをみたすのだ
$a\in\Ap(x)\Rightarrow \exists a'\in\Ap(x),\ a< a'$ を確かめるのだ:

$\A(x)\supset\Ap(x)$ が実数の特徴づけをみたすから、$\exists a'\in\A(x),\ a< a'$ だけど、$0< a< a'$ だから $a'\in\Ap(x)$ なのだ

$a\in \mathbb{Q}_{>0},\ \exists a'\in\Ap(x),\ a< a'\Rightarrow a\in\Ap(x)$ を確かめるのだ:

$\A(x)\supset\Ap(x)$ が実数の特徴づけをみたすから、$a\in\A(x)$ だけど、$a>0$ だから $a\in\Ap(x)$ なのだ

以上を用いて実数を簡単に作れるようになるのだ。$\A(x)\coloneqq(\mathbb{Q}_{<0})$ と定義すればそれは $\zero$ だとわかるし、$\Ap(x)\coloneqq(\mathbb{Q}_{<1})$ と定義すれば $\one$ だとわかるのだ。つぎからこのようにして実数をつくったりするのだ

構造

こうやって数だと思い込んだ実数だけども、まだ演算と大小関係が定まってないからなにやらふにゃふにゃした切り口が集まっただけなのだ

順序関係

$x,y\in\mathbb{R}$ の順序は、次で与えられるのだ:

$x\leq y:\Leftrightarrow \A(x)\subset \A(y)$

有理数 $z\leq w$ で自然に $\si(z)\leq\si(w)$ すなわち $\A(\si(z))\subset\A(\si(w))$ となる ($a\in\A(\si(z))\Rightarrow a< z\Rightarrow a< w\Rightarrow a\in\A(\si(w))$) ように定義したからわりと直感的だと思うのだ

$(\mathbb{R}, \leq)$ が全順序集合になる(すべての元 $x,y$ に対して $x\leq y$ か $x\geq y$ になる)ことは次で確かめられるのだ:

対称律は $\A(x)\subset\A(x)$、推移律は $\A(x)\subset\A(y)\subset\A(z)$、反対称律は $\A(x)\subset\A(y)\land\A(y)\subset\A(x)\Rightarrow\A(x)=\A(y)$ と包含関係の順序性から明らかに従うのだ。全順序性を示すのだ

$x,y\in\mathbb{R}$ が $\A(x)\not\sub\A(y)\land\A(y)\not\sub\A(x)$ であると仮定して矛盾を導くのだ

仮定より $a\in\A(x)\setminus\A(y),\ b\in\A(y)\setminus\A(x)$ がとってこられるのだ

さらに、$\A(x)\setminus\A(y)=\A(x)\cap\B(y)$
だから $a\in\A(x)\cap\B(y)$、
同様に $b\in\B(x)\cap\A(y)$ がわかるのだ

$a\in\A(x),\ b\in\B(x)$ より $a< b$ だけど、
$a\in\B(y),\ b\in\A(y)$ より $b< a$ となって矛盾なのだ

$<$ も定義しておくのだ。順序が定まれば直ちに従うけど:

$x< y:\Leftrightarrow \overline{y\leq x}\Leftrightarrow x\neq y\land x\leq y$

あとは 2 点集合に対する $\max$ なんかよさげなのだ:

$\A(\max\{x,y\})\coloneqq\A(x)\cup\A(y),\ \A(\min\{x,y\})\coloneqq\A(x)\cap\A(y)$

実数は実数で簡潔な表現を得るのだ。何も言ってないに等しいけど:

実数の実数による実数のための簡潔な表現

$\A(x)=\{z\in\mathbb{Q}\mid \si(z)< x\}$

$\A(x)\subset\{z\in\mathbb{Q}\mid \si(z)< x\}$ を言うのだ:

$z\in\A(x)$ と $w\in\A(\si(z))$ をとるのだ。このとき $w< z$ だから $w\in\A(x)$ なのだ。
$w:$ 任意より $\A(\si(z))\subset\A(x)$ すなわち $\si(z)\leq x$ だけど、
$z\notin\si(z)$ より $\si(z)< x$ なのだ

$\{z\in\mathbb{Q}\mid \si(z)< x\}\subset\A(x)$ を言うのだ:

$\si(z)< x$ な $z\in\mathbb{Q}$ をとるのだ。このとき $\si(z)\subsetneq\A(x)$ だから、
$w\in\A(x)\setminus\si(z)$ がとれるのだ。$w\notin\si(z)$ より $z< w$ で、
$w\in\A(x)$ だから $z\in\A(x)$ なのだ

順序を定めるだけで実数の連続性が従うのだけどこれは主張がごついのだ*4:

連続性(完備性)

$\emptyset\neq X\subset\mathbb{R},\ (\exists M\in\mathbb{R},\ \forall x\in X,\ x\leq M)\Rightarrow \exists s,\ \forall x\in X,\ x\leq s, \forall a\in\mathbb{R}, a< s\Rightarrow \exists x\in X, a< x$

ちょっとずつ説明するのだ。
まず、$X\subset\mathbb{R}$ について話をしているのだ。実数の集合ってことなのだ。一応空じゃないのだ

$\exists M\in\mathbb{R},\ \forall x\in X,\ x\leq M$ は、「ある実数 $M$ が存在して $X$ の中身は全部 $M$ 以下」だと言っているのだ。この $M$上界、このとき $X$ は上に有界であると言うのだ。下は「$X$ の中身は全部 $M$ 以上」のときなのだ

そして、もし $X$ が上界を持つなら、以下の性質を持つ実数 $s$ が存在するのだ:

  • $s$ は $X$ の上界
  • $a< s$ なら、$a$ は $X$ の上界でない

これが「実数の連続性」なのだ。この $s$ を $\sup X$ と書いて 「$X$ の上限」と言ったりするのだ

例えば、$X=\{z\in\mathbb{R}\mid z<\one\}$ のとき $\sup X=\one$ だけどこれは $\max X$ じゃないのだ。そういう「ほとんど最大元」な実数の存在を言っているのだ

この性質は順序の完備性ともいって、これのおかげで色々な実数のうれしい性質が従ってくれるのだ。実は有理数も順序体になるから、実質このためだけにデデキント切断は存在するのだ*5

これをすぐ理解する必要はないのだ。これがいかに有用かを見るのが実数の勉強だから、ふと思ったときに実数の連続性を思い出してくれればいいのだ

$X\subset\mathbb{R}$ にたいして、
$\A(s)\coloneqq\displaystyle\bigcup_{x\in X}\A(x)$ とすれば上の条件を満たすのだ
まず $\A(s)$ は実数の特徴づけをみたすのだ:

最初に $\empty\neq\A(s)\subsetneq\mathbb{Q}$ なのだ:

$x\in X$ をひとつとれば $x\in X\subset\displaystyle\bigcup_{x\in X}\A(x)=\A(s)$ より、
$\A(s)\neq\emptyset$ なのだ

さらに $x\in X$ にたいして $x\leq M$ より $\A(x)\subset\A(M)$、
したがって $\A(s)\subset\A(M)\subsetneq\mathbb{Q}$ なのだ

$z\in\A(s)$ に対して $z< z'$ な $z'\in\A(s)$ が存在するのだ:

また、$z\in\A(s)$ をとってくればある $x\in X$ が存在して $z\in\A(x)$ だから、
$z'\in\A(x)$ が存在して $z< z'$、このときとくに $z'\in\A(s)$ なのだ

$z\in\mathbb{Q}$ に対して $z< z'\in\A(s)$ なら $z\in\A(s)$ なのだ:

まず、$\A(s)$ の性質より $z'\in\A(x)$ となるような $x\in X$ がとれ、実数の特徴づけより $z\in\A(x)\subset\A(s)$ となるのだ

もちろん $s$ は $X$ の上界なのだ:

$x\in X$ を任意に取れば $\A(x)\subset\A(s)$ だから $x\leq s$ なのだ

$a< s$ をとるのだ。$a$ が $s$ の上界だと仮定すれば矛盾が起こるのだ*6:

$a$ を $X$ の上界と仮定したから $x\in X$ にたいして $x\leq a$ なのだ。
不等式の定義より $\A(x)\subset\A(a)$ なので、
$\A(s)=\displaystyle\bigcup_{x\in X}\A(x)\subset\A(a)$ となって、
$s\leq a$ より矛盾なのだ

よって $s$ は $X$ の上限なのだ

実数にもアルキメデス性があることがわかるのだ:

アルキメデス

$x\in\mathbb{R}$ に対して $x< \sigma(n)$ となる $n\in\mathbb{N}$ が存在するのだ

$b\in\B(x)$ をとれば $a\in\A(x)$ にたいして $a< b$ だから
$\A(x)\subset\A(\si(b))=\{z\in\mathbb{Q}\mid z< b\}$ すなわち $x\leq\si(b)$、
また有理数のアルキメデス性より、$b< n$ となるような $n\in\mathbb{N}$ が存在するのだ

よって $x\leq\si(b)<\si(n)$ となって実数のアルキメデス性が示されたのだ

加法

$x,y\in\mathbb{R}$ に演算 $+$ を定めるのだ:

$\A(x+y)\coloneqq\A(x)+\A(y)\ (\coloneqq\{a+a'\mid a\in \A(x),a'\in \A(y)\})$

このままだと引き算ができないから単項演算 $-$ を定めるのだ:

$x$ が無理数のとき($\min \B(x)$ が存在しないとき)
$\A(-x)\coloneqq-\B(x)\ (\coloneqq\{-b\mid b\in \B(x)\})$
$x$ が有理数のとき($\min \B(x)$ が存在するとき)
$\A(-x)\coloneqq-\B(x)\setminus\{-\min \B(x)\}$

$+$ も $-$ も切断の片っぽの集合の有理数を素直に演算しただけなので、すんなり理解できると思うのだ。有理数無理数で分けたのは $\B(x)$ を反転させたときにその切り口も一緒に移ってしまうからそれを消すためなのだ

有理数の埋め込みがこれで有理数と同じように計算できることを示すのだ:

有理数 $z,w$ に対して $\si(z)+\si(w)=\si(z+w), -\si(z)=\si(-z)$ なのだ

$z,w\in\mathbb{Q}$ を任意に取るのだ

$\A(\si(z))+\A(\si(w))=\A(\si(z+w))$ はすぐわかるのだ:

$a\in\A(\si(z)),\ b\in\A(\si(w))$ をとればこれは $a< z,\ b< w$ でしかないから
$a+b< z+w$ より $a+b\in\A(\si(z+w))$ なのだ

$c\in\A(\si(z+w))$ をとるのだ。$\ep\coloneqq(z+w)-c$ とすればこれは正で、
$a\coloneqq z-\ep/2\in\A(\si(z)),\ b\coloneqq w-\ep/2\in\A(\si(w))$ とすれば $a+b=c$ なのだ

よって $\A(\si(z))+\A(\si(w))=\A(\si(z+w))$ が言えたのだ

$\A(-\si(z))=\A(\si(-z))$ はもっと直接的なのだ:

$\si(z)$ は有理数の埋め込みだから、

<$>\begin{aligned} \A(-\si(z))&=-\B(\si(z))\setminus\{-\min \B(\si(z))\}\\ &=\{-a\in\mathbb{Q}\mid z\leq a\}\setminus\{-z\}\\ &=\{-a\in\mathbb{Q}\mid z< a\}\\ &=\{a\in\mathbb{Q}\mid a<-z\}\\ &=\A(\si(-z)) \end{aligned}<$>

となってしたがうのだ

加法とその逆元の定義がちゃんと実数になることを示すのだ:

$\A(x)+\A(y)$ は実数の特徴づけをみたすのだ

最初に $\emptyset\neq\A(x)+\A(y)\subsetneq\mathbb{Q}$ なのだ:

まず $\A(x)\neq\emptyset,\ \A(y)\neq\emptyset$ より、$a\in\A(x),\ b\in\A(y)$ が存在するから $a+b\in\A(x)+\A(y)$ なのだ。任意にその $a,b$ をとっておくのだ

また、$a'\in\B(x),\ b'\in\A(y)$ をとれば $a< a',\ b< b'$ より $a+b< a'+b'$、$a,b$ は任意だったから $a'+b'\notin\A(x)+\A(y)$、特に $\A(x)+\A(y)\neq\mathbb{Q}$ なのだ

$z\in\A(x)+\A(y)$ に対して $z< z'\in\A(x)+\A(y)$ がとれるのだ:

$z\in\A(x)+\A(y)$ に対して $a\in\A(x),\ b\in\A(y)$ が存在して $z=a+b$ なのだ。実数の特徴づけより、$a< a'\in\A(x),\ b< b'\in\A(y)$ がとれて、$z'\coloneqq a'+b'\in\A(x)+\A(y)$ とすれば $z=a+b< a'+b'=z'$ なのだ

$z\in\mathbb{Q}$ に対して $z<\exists z'\in\A(x)+\A(y)$ なら、$z\in\A(x)+\A(y)$ なのだ:

$z\in\mathbb{Q}$、$z< z'\in\A(x)+\A(y)$ とするのだ。$a\in\A(x),\ b\in\A(y)$ が存在して $z'=a+b$ なのだ

このとき $a'\coloneqq a-(z'-z)< a$ とすれば実数の特徴づけより $a'\in\A(x)$ で、$z=a'+b\in\A(x)+\A(y)$ なのだ

$\A(-x)$ は実数の特徴づけをみたすのだ

$\A(-x)\subset-B(x)$ より $\A(-x)\neq\mathbb{Q}$、
$\B(x)\neq\emptyset$ から元 $b$ をとれば $\min\B(x)\neq b+1$*7 より $-b-1\in\A(-x)\neq\emptyset$ なのだ

$z\in\A(-x)$ をとれば $-z\in\B(x)$ かつ $-z\neq\min\B(x)$ だから、$-z< b$ な $b\in\B(x)$ がとれるのだ。そのままだと $b=\min\B(x)$ かもしれないから $a=-\dfrac{-z+b}2$ と取り直せば $a< z$ な $a\in\A(-x)$ が手に入るのだ

$z\in\mathbb{Q},\ a\in\A(-x),\ z< a$ とすれば、$-a\in\B(x), -a< -z$ より $-z\in\B(x)$ で $-z\neq\min\B(x)$ より $z\in\A(-x)$ なのだ

こうして定められた加法は順序関係とあわせて可換な順序群をなすのだ。以下その性質と証明なのだ

交換法則(可換性)
$x+y=y+x$
結合法則(結合律)
$(x+y)+z=x+(y+z)$

は定義より明らかなのだ

加法の単位元は $\zero$ なのだ:

単位元

$x+\zero=x$

$\A(x)+\A(\zero) = \A(x)$ を確かめればいいのだ

$z\in \A(x)$ を任意にとれば実数の特徴づけより、
$z< a$ となるような $a\in \A(x)$ が存在するのだ

このとき、$z-a<0$ すなわち $z-a\in\A(\zero)$ であるから、
$z\in\A(x)+\A(\zero)$ となるのだ

$z$ は任意にとったから $\A(x)\subset \A(x)+\A(\zero)$ が成立するのだ

今度は $z\in \A(x)+\A(\zero)$ を任意にとるのだ
すると $^\exists a\in\A(x), b\in \A(\zero)\ \textup{s.t.}\ z=a+b$ なのだ

とくに $b<0$ だったから、$z< a$ すなわち $z\in \A(x)$ なのだ
$z$ は任意にとったから $\A(x)+\A(\zero)\subset \A(x)$ が成立するのだ

両方の包含関係が言えたから $\A(x)+\A(\zero) = \A(x)$ なのだ

あとは逆元の存在なのだ:

逆元

$x+(-x)=\zero$

これも $\A(x)+\A(-x)=\A(\zero)$ を示せばいいのだ

$a\in \A(x),\ b\in \A(-x)$ を任意にとるのだ

$\A(-x)\subset -\B(x)$ より、とくに $a<-b$ なのだ。ここから $a+b<0$、すなわち $a+b\in \A(\zero)$

よって $\A(x)+\A(-x)\subset \A(\zero)$

$z\in \A(\zero)$ を任意にとるのだ。すると、ある有理数 $a\in \A(x)$ が存在して、$a-\dfrac z2\notin \A(x)$ なのだ($r=-\dfrac z2$ で挟み撃ちするのだ)

このとき、$a-z\in \B(x)\land a-z\neq \min \B(x)$ すなわち $z-a\in \A(-x)$ であるので、$z=a+(z-a)\in \A(x)+\A(-x)$

よって $\A(x)+\A(-x)=\A(\zero)$ なのだ

これで加法がちゃんと定義されている(可換群になっている)ことが確認できたのだ

順序関係とちゃんと関わっていることも証明するのだ:

群の順序性

$x\leq y\Rightarrow x+z\leq y+z$

$x\leq y$ すなわち $\A(x)\subset\A(y)$ を仮定して、$\A(x)+\A(z)\subset\A(y)+\A(z)$ を導くのだ

$a\in\A(x)+\A(z)$ を任意にとると、$b\in\A(x)\, c\in\A(z)$ が存在して $a=b+c$ となるのだ。仮定の包含関係から $b\in\A(y)$ なので、$a=b+c\in\A(y)+\A(z)$ なのだ

これによって次が従うのだ(「$\because$」以下証明なのだ):

$-(-x)=x$
<$>\begin{aligned}-(-x)&=-(-x)+\zero\\&=-(-x)+(-x+x)\\&=(-(-x)+(-x))+x\\&=\zero+x=x\end{aligned}<$>
$x\leq\zero\Leftrightarrow-x\geq\zero$
<$> \begin{aligned} &&x&\leq\zero\\ \Rightarrow&& x+(-x)&\leq\zero+(-x)\\ \Rightarrow&&\zero&\leq -x\end{aligned} <$>

反対側も同様なのだ

乗法

$x,y\in\mathbb{R}$ に演算 $\cdot$ を定めるのだ:

$x,y>\zero$ のとき
$\Ap(x\cdot y)\coloneqq\{a\cdot a'\mid a\in \Ap(x),a'\in \Ap(y)\}$
$x=\zero\lor y=\zero$ のとき
$x\cdot y\coloneqq \zero$
$x<\zero\land y\geq \zero$ のとき
$x\cdot y\coloneqq-( (-x)\cdot y)$
$y<\zero$ のとき
$x\cdot y\coloneqq-(x\cdot (-y))$

めんどくさいから共に正と $\zero$ の時だけ乗法を定義するのだ。$x$ が負 ($x<\zero$) のとき $-x$ は正になるからこの定義で十分なのだ

あと、$x\neq\zero$ に演算 $^{-1}$ を定めるのだ:

$x>\zero$ のとき
$\Ap(x^{-1})\coloneqq\{z^{-1}\mid z\in-\A(-x)\}$
$x<\zero$ のとき
$x^{-1}\coloneqq-(-x)^{-1}$

例のごとく正のときで定義するのだ。境界を考えるのがめんどくさいから $\A(-x)$ を取り直して素直に $^{-1}$ をとったのだ。ちょっと込み入った定義だけどもうここまでくればわかると思うのだ

除算は $x/y=x\cdot y^{-1}$ で行うのだ

有理数の埋め込みとして演算がちゃんと機能していることを示すのだ:

有理数 $z,w$ に対して $\si(z)\cdot\si(w)=\si(z\cdot w), \si(z)^{-1}=\si(z^{-1})$ なのだ

正のときだけ見れば負のときは加法の逆元が有理数にちゃんと作用してたから明らかに従うのだ
$z,w>0$ をとるのだ

$\Ap(\si(z)\cdot\si(w))=\Ap(\si(z\cdot w))$ なのだ:

まず、$c\in\Ap(\si(z)\cdot\si(w))$ を任意に取れば $a\in\Ap(\si(z)),\ b\in\Ap(\si(w))$ が存在して $a\cdot b=c$、
とくに $0< a< z,\ 0< b< w$ だから $0< c=a\cdot b< z\cdot w$ より、$c\in\Ap(\si(z\cdot w))$ なのだ

今度は $c\in\Ap(\si(z\cdot w))$ として任意にとれば、$0< c< z\cdot w$ なのだ

$a\coloneqq z\cdot\dfrac{2\cdot c}{c+z\cdot w},\ b\coloneqq w\cdot\dfrac{c+z\cdot w}{2\cdot z\cdot w}$ とおいて
$2\cdot c< c+z\cdot w<2\cdot z\cdot w$ に注意すれば分数の部分は $1$ 未満で
$0< a< z,\ 0< b< w$ より $a\in\A(\si(z)),\ b\in\A(\si(w))$ 、

<$>\begin{aligned} a\cdot b&=z\cdot\dfrac{2\cdot c}{c+z\cdot w}\cdot w\cdot\dfrac{c+z\cdot w}{2\cdot z\cdot w}\\ &=z\cdot w\cdot\dfrac{2\cdot c}{c+z\cdot w}\cdot\dfrac{c+z\cdot w}{2\cdot z\cdot w}\\ &=z\cdot w\cdot\dfrac{2\cdot c}{2\cdot z\cdot w}\\ &=c \end{aligned}<$>

より $c\in\Ap(\si(z)\cdot\si(w))$ なのだ

逆元はやっぱり単純に $\Ap(\si(z^{-1}))=\Ap(\si(z)^{-1})$ が示せるのだ:

<$>\begin{aligned} \A(\si(z)^{-1})&=\{a^{-1}\mid a\in-\A(-\si(z))\}\\ &=\{a^{-1}\mid -a\in\A(\si(-z))\}\\ &=\{a^{-1}\mid a\in\Qp,\ -a<-z\}\\ &=\{a^{-1}\mid a\in\Qp,\ z< a\}\\ &=\{a^{-1}\mid a\in\Qp,\ a^{-1}< z^{-1}\}\\ &=\{b\mid b\in\Qp,\ b< z^{-1}\}\\ &=\A(\si(z^{-1})) \end{aligned}<$>

やっぱり実数になることも示すのだ:

$x,y>\zero$ のとき $\Ap(x\cdot y)$ は正の実数の特徴づけをみたすのだ

$\Ap(x),\Ap(y)\neq\emptyset$ より $\Ap(x\cdot y)\neq\emptyset$、
$b\in\B(x),\ b'\in\B(y)$ をとれば
$0< a\cdot a'< b\cdot b'\quad\forall a\in\Ap(x),a'\in\Ap(y)$ だから
$b\cdot b'\notin\Ap(x\cdot y)$、よって $\Ap(x\cdot y)\subsetneq\Qp$ なのだ

$z\in\Ap(x\cdot y)$ を任意にとれば $z< z'$ となる $z'\in\Ap(x\cdot y)$ がとれるのだ:

$a\in\Ap(x),\ b\in\Ap(y)$ を使って $z=a\cdot b$ と表せるのだ

正の実数の特徴づけより $a< a'\in\Ap(x),\ b< b'\in\Ap(y)$ がとれて
$z'\coloneqq a'\cdot b'>a\cdot b=z$ とすれば十分なのだ

$z>0$ に対して $z< z'$ となる $z'\in\Ap(x\cdot y)$ がとれれば $z\in\Ap(x\cdot y)$ なのだ:

$a\in\Ap(x),\ b\in\Ap(y)$ を使って $z'=a\cdot b$ と表せるから
$z=(a\cdot\dfrac z{z'})\cdot b\in\Ap(x\cdot y)$ なのだ ($a\cdot\dfrac z{z'}< a$ より $a\cdot\dfrac z{z'}\in\Ap(x)$ なのだ)

$x>\zero$ のとき $\A(x^{-1})$ は正の実数の特徴づけをみたすのだ

$\emptyset\neq\Ap(x^{-1})\subsetneq\Qp$ を示すのだ:

$-\A(-x)$ が空でないことから $\A(x^{-1})\neq\emptyset$ なのだ。
$-x<\zero$ より $\B(-x)\supsetneq\B(\zero)$ だから
$b\in-B(-x)\setminus\B(\zero)=-B(-x)\cap\Qp$ をとるのだ

$a\in-\A(-x)$ を任意に取れば、
切断の定義より $0< b< a$ すなわち $0< a^{-1}< b^{-1}$
よって、$b\notin\Ap(x^{-1})$ すなわち $\emptyset\neq\Ap(x^{-1})\subsetneq\Qp$ なのだ

$z\in\A(x^{-1})$ を任意にとれば $z< z'$ となる $z'\in\A(x^{-1})$ がとれるのを確かめるのだ:

$-z^{-1}\in\A(-x)$ だから実数の特徴づけより $-z^{-1}< a$ となる $a\in\A(-x)$ がとれるのだ。そのまま $z'\coloneqq(-a)^{-1}\in\A(x^{-1})\in\Ap(x)$ とすれば $z< z'$ となるのだ

$z\in\Qp,\ z'\in\Ap(x^{-1}),\ z< z'$ として $z\in\A(x^{-1})$ を示すのだ:

$-z'^{-1}\in\A(-x)$ で、とくに $-z^{-1}<-z'^{-1}$ だから $-z^{-1}\in\A(-x)$、
$z=(-(-z^{-1}))^{-1}\in\Ap(x^{-1})$ なのだ

$\cdot, ^{-1}$ を含めると実数は順序体をなすのだ。今から証明していくのだ

交換法則(可換性)

$x\cdot y=y\cdot x$

は定義より明らかなのだ

結合法則(結合律)

$(x\cdot y)\cdot z=x\cdot(y\cdot z)$

$x,y,z$ のどれかが $\zero$ のときはただちに $(x\cdot y)\cdot z=\zero=x\cdot(y\cdot z)$ なのだ
$x,y,z>\zero$ とすれば定義から $\Ap( (x\cdot y)\cdot z)=\{a\cdot a'\cdot a''\mid a\in\Ap(x),a'\in\Ap(y),a''\in\Ap(z)\}$ となって明らかに従うのだ

$x<\zero,\ y,z>\zero$ のときは

<$>\begin{aligned} x\cdot(y\cdot z)&=-( (-x)\cdot(y\cdot z))\\ &=-( ( (-x)\cdot y)\cdot z)\\ &=-( (-(x\cdot y))\cdot z)\\ &=-(-( (x\cdot y)\cdot z))\\ &=(x\cdot y)\cdot z \end{aligned}<$>

それ以外 ($y<\zero,\ z>\zero$ のとき、$z<\zero$ のとき) も $-$ を自由に乗法に出し入れしながら計算できて従うのだ

単位元

$x\cdot\one=x$

例のごとく $x>\zero$ のときを証明すれば
$x<0$ のときにも $x\cdot\one=-( (-x)\cdot\one)=-(-x)=x$ のようにしたがうし、
$x=\zero$ のときも明らかに $\zero\cdot\one=\zero$ なのだ

$\Ap(x\cdot\one)=\Ap(x)$ を示せばいいのだ。$\Ap(\one)=(0,1)$*8 に注意するのだ

$z\in\Ap(x\cdot\one)$ をとれば積の定義から
$a\in\Ap(x),b\in\Ap(\one)$ がとれて $z=a\cdot b$ なのだ。
このとき $0< b<1$ より $0< a\cdot b< a$ なので $z=a\cdot b\in\Ap(x)$ なのだ

$z\in\Ap(x)$ をとれば正の実数の特徴づけより
$a\in\Ap(x)$ が存在して $0< z< a$ なのだ。
$b=\dfrac za\in(0,1)=\Ap(\one)$ とすれば
$a\cdot b=a\cdot\dfrac za=z$ より $z\in\Ap(x\cdot\one)$ なのだ

逆元

$x\neq\zero\Rightarrow x\cdot x^{-1}=\one$

これも $x>\zero$ で示せれば $x<\zero$ のときも $x\cdot x^{-1}=-(-( (-x)\cdot (-x)^{-1}))=-(-\one)=\one$ となってしたがうのだ

まず $\Ap(x\cdot x^{-1})\subset\Ap(\one)$ すなわち
$a\in\Ap(x),b\in\Ap(x^{-1})$ を任意にとったら $a\cdot b\in\Ap(\one)$ であることを示すのだ:

$b^{-1}\in-\A(-x)\subset\B(x)$ であることを思い出せば、
$a\in\A(x)$ より $a< b^{-1}$ すなわち $0< a\cdot b<1$ だから
$a\cdot b\in\Ap(\one)$ なのだ

$\Ap(\one)\subset\Ap(x\cdot x^{-1})$ も示されるのだ:

$z\in\Ap(\one)$ を任意にとるのだ。
$w\in-\A(-x)$ が存在して $w\cdot z\in\Ap(x)$ なのだ:

$m\in\Ap(x)$ をひとつとって、$r\coloneqq m\cdot(1-z)/z>0$ と置けば、
$r/2$ での挟み撃ちより、
$a'+\dfrac r2\notin\A(x)$ となる $a'\in\A(x)$ が存在するのだ。
$a\coloneqq\max\{a',m\}$ と置けば $a'+\dfrac r2< a+r\in-\A(-x)$、
さらに $a',m\in\A(x)$、$0< m\leq a$ より $a\in\Ap(x)$ なのだ

ここで $w\coloneqq a+r\in-\A(-x)$ と置けば

<$>\begin{aligned} w\cdot z&=(a+r)\cdot z\\ &=a\cdot z+r\cdot z\\ &=a\cdot z+m\cdot(1-z)\\ &\leq a\in\Ap(x) \end{aligned}<$>

より、$w\cdot z\in\Ap(x)$ なのだ

そしたら $a\coloneqq w\cdot z\in\Ap(x),\ b\coloneqq w^{-1}\in\Ap(x^{-1})$ とすれば、
$a\cdot b=w\cdot z\cdot w^{-1}=z$ となるから $z\in\Ap(x\cdot x^{-1})$ なのだ

分配法則

$x\cdot(y+z)=x\cdot y+x\cdot z$

$x,y,z>\zero$ としてまず証明するのだ

$\Ap(x\cdot(y+z))\subset\Ap(x\cdot y+x\cdot z)$ は簡単なのだ:

$w\in\Ap(x\cdot(y+z))$ を任意に取るのだ

定義から $a\in\Ap(x),\ b\in\Ap(y+z)$ によって $w=a\cdot b$ と表せるのだ。
さらに、$c\in\A(y),\ d\in\A(z)$ によって $b=c+d$ と表せるのだ

よって $w=a\cdot(c+d)=a\cdot c+a\cdot d$ より $w\in\A(x\cdot y+x\cdot z)$ だけど、
$w\Ap(x\cdot(y+z))$ より $w>0$ なので、
$w\in\Ap(x\cdot y+x\cdot z)$ なのだ

$\Ap(x\cdot y+x\cdot z)\subset\Ap(x\cdot(y+z))$ はちょっと難しいのだ:

$w\in\Ap(x\cdot y+x\cdot z)$ をとるのだ

まず、$a\in\Ap(x\cdot y),\ b\in\Ap(x\cdot z)$ で $w=a+b$ と書けるのだ:

最初に $a\in\A(x\cdot y),\ b\in\A(x\cdot z)$ で $w=a+b$ と書くのだ。
$a,b>0$ なら大丈夫だし、
$a,b\leq 0$ ならそもそも $w\leq 0$ となって矛盾するのだ

$a\leq 0, b>0$ のとき、
$c\in\Ap(x\cdot y)\cap\mathbb{Q}_{< w}$ をひとつとってきて、
$a'\coloneqq c\in\Ap(x\cdot y),\ b'\coloneqq b+a-c$ と定義すれば
$0< w-c\eqqcolon b'< b$ より $b'\in\Ap(x\cdot z)$、
$a'+b'=c+b+a-c=w$ となるから大丈夫なのだ

$a>0,b\leq 0$ のときも同様なのだ

これによって $c,d\in\Ap(x),\ e\in\Ap(y),\ f\in\Ap(z)$ をつかって
$w=c\cdot e+d\cdot f$ と書けるのだ
このとき、 $c'\coloneqq\max\{c,d\},e'\coloneqq e\cdot\dfrac c{c'},f'\coloneqq f\cdot\dfrac d{c'}$ とすれば
$c'\in\Ap(x)$ で、$e'=e\cdot\dfrac c{c'}< e$ より $e'\in\Ap(y)$、同様に $f'\in\Ap(z)$ なのだ

<$>\begin{aligned} c'\cdot(e'+f')&=c'\cdot e'+c'\cdot f'\\ &=c'\cdot e\cdot\dfrac c{c'}+c'\cdot f\cdot\dfrac d{c'}\\ &=c\cdot e+d\cdot f\\ &=w \end{aligned}<$>

だから $w\in\Ap(x\cdot(y+z))$ なのだ

$x=\zero$ のときは即 $x\cdot(y+z)=0=x\cdot y+x\cdot z$ なのだ
$y=\zero$ のときも $x\cdot(y+z)=x\cdot z=x\cdot y+x\cdot z$ で、
$z=\zero$ のときも同様なのだ

$x<\zero,\ y,z>\zero$ のときも簡単なのだ:

まず一般の $a,b\in\mathbb{R}$ で $-$ の分配性を示すのだ。

<$>\begin{aligned} -(a+b)=&-(a+b)+a-a+b-b\\ =&-(a+b)+(a+b)-a-b\\ =&-a-b \end{aligned}<$>

そしたら後は簡単なのだ

<$>\begin{aligned} x\cdot(y+z)&=-( (-x)\cdot(y+z))\\ &=-( (-x)\cdot y+(-x)\cdot z)\\ &=-(-x)\cdot y-(-x)\cdot z\\ &=x\cdot y+x\cdot z \end{aligned}<$>

$y<\zero\lor z<\zero$ のときは、$y+z$ が正か負かで場合分けするのだ
$y+z=\zero$ のとき $z=-y$ だから
$x\cdot(y+z)=0=x\cdot y-x\cdot y=x\cdot y+x\cdot z$ がしたがうのだ

$y+z>\zero$ のとき、$y<0< z$ としても一般性を失わないのだ
(逆だったら任意で $y,z$ をとってるんだからひっくり返せばいいのだ)

<$>\begin{aligned} x\cdot z&=x\cdot(z+y-y)\\ &=x\cdot(y+z)+x\cdot(-y)\\ &=x\cdot(y+z)-x\cdot y\\ x\cdot z+x\cdot y&=x\cdot(y+z) \end{aligned}<$>

だから大丈夫なのだ

$y+z<\zero$ のときは $(-y)+(-z)>\zero$ だから大丈夫なのだ:

<$>\begin{aligned} x\cdot(y+z)&=-(x\cdot(-(y+z)))\\ &=-(x\cdot( (-y)+(-z)))\\ &=-(x\cdot(-y)+x\cdot(-z))\\ &=-(-x\cdot y-x\cdot z)\\ &=x\cdot y+x\cdot z \end{aligned}<$>

よって一般の全ての場合で分配法則が示されたのだ

あとは順序と体の関係なんだけどこれは簡単で:

体の順序づけ

$x,y\geq\zero\Rightarrow x\cdot y\geq\zero$

$\Ap(x\cdot y)$ が正の実数の特徴づけをみたすから明らかなのだ

以上から実数が完備順序体だとわかったのだ。ひとまず実数の構成が終わって安心なのだ。次はコーシー列との関連を見ていくのだ

その前に直感的な命題を証明しておくのだ:

$x\neq\zero\Rightarrow(x^{-1})^{-1}=x$

<$>\begin{aligned} (x^{-1})^{-1}&=(x^{-1})^{-1}\cdot x^{-1}\cdot x\\ &=x \end{aligned}<$>

$x\leq y,\ z\geq 0\Rightarrow x\cdot z\leq y\cdot z$

<$>\begin{aligned} &&x&\leq y\\ \Leftrightarrow&&0&\leq y-x\\ \Rightarrow&&0&\leq(y-x)\cdot z\\ &&&=y\cdot z-x\cdot z\\ \Leftrightarrow&&x\cdot z&\leq y\cdot z\\ \end{aligned}<$>

$\zero< x\leq y\Rightarrow y^{-1}\leq x^{-1}$

$\Ap(x^{-1}),\ \Ap(y^{-1})$ が正の実数を構成するから $x^{-1},y^{-1}>0$ なのだ

<$>\begin{aligned} x&\leq y\\ x\cdot x^{-1}\cdot y^{-1}&\leq y\cdot x^{-1}\cdot y^{-1}\\ y^{-1}&\leq x^{-1} \end{aligned}<$>

コーシー列再考

やっとここに来てコーシー列のことを考え直すのだ。まず、実数まで勘定に入れるとコーシー列は収束するのだ。
コーシー列と数列の収束の定義の実数版を書いておくのだ:

実コーシー列とその収束

コーシー列

実数列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ がコーシー列であるとは以下をいうのだ:
$\gdef\ep{\varepsilon}\forall \ep>\zero,\ \exists N\in\mathbb{N},\ \forall n,m\geq N,\ |x_n-x_m|<\ep$

数列の収束

実数列 $(a_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が$a\in\mathbb{R}$に収束するとは以下をいうのだ:
$\gdef\ep{\varepsilon}\forall \ep>\zero,\ \exists N\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N,\ |x_n-a|<\ep$
これを $\displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=a$ と書いたりするのだ*9

ただし $x\in\mathbb{R}$ に対して $|x|\coloneqq\displaystyle\begin{cases}x &\text{if } x\geq\zero\\-x &\text{if } x<\zero\end{cases}$ なのだ

ちょっと真面目に解析のお勉強なのだ。有界単調列の収束なのだ:

単調収束定理

実数列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が
$\exists M\in\mathbb{R},\ \forall n\in\mathbb{N},\ x_n\leq x_{n+1}\leq M$ なら収束するのだ

$\exists M\in\mathbb{R},\ \forall n\in\mathbb{N},\ x_n\geq x_{n+1}\geq M$ でも収束するのだ

$\{x_n\mid n\in\mathbb{N}\}\subset\mathbb{R}$ は上に有界だから $a=\sup X$ が存在するのだ。
$(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が $a$ に収束することを示すのだ

$\ep>\zero$ をとるのだ。$a-\ep< a$ だから上限の性質より $\exists N\in\mathbb{N},\ a-\ep< x_N$ なのだ。
$n>N$ にたいして $a-\ep< x_N\leq x_n< a< a+\ep$、
すなわち $|x_n-a|<\ep$ なのだ

もう一つの方は $y_n\coloneqq-x_n$ と置けば従うのだ

上極限

実数列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が $M\in\mathbb{R},\ \forall n\in\mathbb{N},\ |x_n|\leq M$ のとき、
$\displaystyle\limsup_{n\to\infty}x_n\coloneqq\lim_{n\to\infty}\sup_{k\geq n}x_k$ を上極限と呼ぶのだ

$y_n\coloneqq\displaystyle\sup_{k\geq n}x_k$ とすればこれは
$\{x_n\mid n\in\mathbb{N}\}$ が上に有界なのでちゃんと定義できてかつ
$-M\leq y_n\leq y_{n+1}$ だから単調収束定理より収束するのだ

コーシー列の有界

コーシー列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は
有界($\exists M\in\mathbb{R},\ \forall n\in\mathbb{N},\ |x_n|\leq M$)なのだ

$\ep\coloneqq \one$ とすれば、$\exists N\in\mathbb{N},\ \forall n,m\geq N,\ |x_n-x_m|<\one$ だからとくに $\forall n\geq N,\ |x_n|<|x_N|+\one$ より、
$|x_n|\leq\max\{\max\{|x_n|\mid n< N\},|x_N|+\one\}+\eqqcolon M$ なのだ

これでコーシー列の収束が証明できるのだ:

実コーシー列の収束

実数列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ がコーシー列なら、
$\exists a\in\mathbb{R},\ \displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=a$ なのだ

$(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は有界だから
$a\coloneqq\limsup_{n\to\infty}x_n$ と置けて $x_n$ はこれに収束するのだ

まず $\ep>\zero$ をとるのだ。
$(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ はコーシー列だから$\gdef\three{\sigma(3)}$
$\exists N_1\in\mathbb{N},\ \forall n,m\geq N_1,\ |x_n-x_m|<\ep/\three$ なのだ

$y_n\coloneqq\displaystyle\sup_{k\geq n}x_k$ とすれば $a=\displaystyle\lim_{n\to\infty}y_n$ だから、
$\exists N_2\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N_2,\ |y_n-a|<\ep/\three$ なのだ

このとき、$n_0\coloneqq\max\{N_1,N_2\}$ とすれば $|y_{n_0}-a|<\ep/\three$ なのだ

$y_{n_0}=\sup_{k\geq n_0}x_k$ だったから、
$\exists n_1\geq n_0,\ y_{n_0}-\ep/\three< x_{n_1}< y_{n_0}$
とくに $|y_{n_0}-x_{n_1}|<\ep/\three$ なのだ

$n\geq N_1$ をとれば、$n_1\geq n_0\geq N_1$ だから

<$>\def\d#1#2{\vert #1 - #2 \vert}\begin{aligned} \d{x_n}{a}&\leq\d{x_n}{x_{n_1}}+\d{x_{n_1}}{y_{n_0}}+\d{y_{n_0}}{a}\\ &<\ep/\three+\ep/\three+\ep/\three\\ &=\ep \end{aligned}<$>

となって収束が示せたのだ

収束先に近づくから逆にそれ以外からは遠ざかるのだ:

実数列の収束先との不等式

$(x_n)_{n\in\mathbb{N}},\ \displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=a$ なら、
$b< a\Leftrightarrow\exists \ep>\zero,\ N\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N,\ b+\ep< x_n$

まず、$\Rightarrow$ を示すのだ。$b< a$ とするのだ。
$\ep\coloneqq \dfrac{a-b}{\si(2)}>0$ とおけば $\displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=a$ より
$\exists N\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N,\ |x_n-a|<\ep$ なのだ

このときとくに $n\geq N$ をとれば

<$>\begin{aligned} \vert x_n-a\vert&<\ep\\ a-x_n&<\ep\\ a-\ep&< x_n\\\\ \si(2)\cdot\ep&=a-b\\ b+\ep&=a-\ep\\ &< x_n \end{aligned}<$>

なのだ

次に $\Leftarrow$ を示すのだ。$\exists \ep>\zero,\ N\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N,\ b+\ep< x_n$ とするのだ

このとき、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=a$ より $M\in\mathbb{N},\ \forall n\geq M,\ |x_n-a|<\ep$ とくに $x_n-\ep< a$ なのだ

よって $n\coloneqq\max\{N,M\}$ とすれば $b< x_n-\ep< a$ なのだ

有理数での考察

これは有理数の世界でも成り立つことがわかると思うのだ。でもちょっと待つのだ

まず、実数と実数の間に有理数があることがすぐわかるのだ:

$x,y\in\mathbb{R},\ x< y$ に対して $x<\si(a)< y$ となる $a\in\mathbb{Q}$ が存在するのだ

$x< y$ より $\A((x+y)/2)\subsetneq\A(y)$ だから
$a\in\A(y)\setminus\A((x+y)/2)$ とすれば $x<(x+y)/2\leq\si(a)< y$ なのだ

そしたら有理数でコーシー列だったら実数でもコーシー列だとわかるのだ:

コーシー列の埋め込み

有理数列 $(a_n)_{n\in\mathbb{N}}\subset\mathbb{Q}$ がコーシー列なら、
その埋め込み $(x_n=\si(a_n))_{n\in\mathbb{N}}\subset\mathbb{R}$ もコーシー列なのだ

$\ep>\zero$ を任意に取るのだ。すると先の議論より $\zero<\si(\ep')<\ep$ となる有理数 $\ep'$ がとれるのだ

$(a_n)_{n\in\mathbb{N}}\subset\mathbb{Q}$ はコーシー列だから、
$\exists N\in\mathbb{N},\ \forall n,m\geq N,\ |a_n-a_m|<\ep'$ なのだ

このとき特に $\forall n,m\geq N$ で

<$>\def\norm#1{|#1|}\begin{aligned} \norm{x_n-x_m}&=\norm{\si(a_n)-\si(a_m)}\\ &=\norm{\si(a_n-a_m)}\\ &=\si(\norm{a_n-a_m})\\ &<\si(\ep')\\ &\leq\ep \end{aligned}<$>

なのだ

収束先以外からは遠ざかる性質も有理数に持ち込めるのだ:

有理数列の収束先との不等式

$(a_n)_{n\in\mathbb{N}}\subset\mathbb{Q},\ \displaystyle\lim_{n\to\infty}\si(a_n)=a$ とすると、
$\si(b)< a\Leftrightarrow\exists \ep>0,\ N\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N,\ b+\ep< a_n$ なのだ

まず $\Rightarrow$ を示すのだ。$\si(b)< a$ とするのだ

実数での性質より $\exists \ep'>\zero,\ N\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N,\ \si(b)+\ep'< \si(a_n)$ だけど、
$\zero<\si(\ep)<\ep'$ となる $\ep\in\mathbb{Q}$ が存在するから $n\geq N$ で、
$b+\ep< a_n$ なのだ

次に $\Leftarrow$ を示すのだ。$\exists \ep>0,\ N\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N,\ b+\ep< a_n$ とするのだ

このとき $\forall n\geq N,\ \si(b)+\si(\ep)< \si(a_n)$ より、
$x_n\coloneqq\si(a_n),\ \ep'\coloneqq\si(\ep),\ N'\coloneqq N$ として実数での性質を使えば $\si(b)< a$ なのだ

コーシー列と実数の関係

コーシー列から実数を作るのは簡単なのだ。埋め込んでから極限を取ればいいのだ。特筆すべきは埋め込まなくてもそのまま書けちゃうことなのだ:

コーシー列の定める実数

$(a_n)_{n\in\mathbb{N}}\subset\mathbb{Q}:$ コーシー列 に対して実数 $a_\infty\coloneqq\displaystyle\lim_{n\to\infty}\si(a_n)$ が定まるのだ

また、$\A(a_\infty)=\{z\in\mathbb{Q}\mid \exists \ep>0,N\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N,\ z+\ep< a_n\}$ なのだ

実数の簡潔な表現収束先以外から遠ざかる性質を使えば

<$>\begin{aligned} \A(a_\infty)&=\{z\in\mathbb{Q}\mid \si(z)< a_\infty\}\\ &=\{z\in\mathbb{Q}\mid \exists \ep>0,N\in\mathbb{N},\ \forall n\geq N,\ z+\ep< a_n\} \end{aligned}<$>

なのだ

では実数からコーシー列を作るのだ:

実数による有理コーシー列の構成

$x\in\mathbb{R}$ から $a_\infty=x$ な $(a_n)_{n\in\mathbb{N}}\subset\mathbb{Q}:$ コーシー列 が構成できるのだ

挟み撃ちを覚えているのだ? $n\in\mathbb{N}$ をとりあえず取るのだ

$r\coloneqq \dfrac 1n$ とすれば $b-a<\dfrac 1n$ な $a\in\A(x),\ b\in\B(x)$ がとれて、
とくにこのとき $\si(a)< x\leq\si(b)$ だから、$x-\si(a)<\si(\dfrac 1n)$ がわかるのだ

よってこの $a$ を $a_n$ と置き直せば数列 $(a_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が完成するのだ

$\ep>0$ をとってコーシー列か確認するのだ

$2/\ep$ より大きな自然数 $N$ が有理数アルキメデス性により存在するのだ

$n,m\geq N$ をとれば

<$>\def\no#1{|#1|}\begin{aligned} \si(\no{a_n-a_m})&<\no{\si(a_n)-\si(a_m)}\\ &\leq \no{\si(a_n)-x}+\no{\si(a_m)-x}\\ &< \si(\dfrac 1n)+\si(\dfrac 1m)\\ \no{a_n-a_m}&<\dfrac 2N\\ &<\ep \end{aligned}<$>

より示せたのだ

また、$\ep>\zero$ をとって収束するかみてやるのだ。今度は $\ep$ が実数なのだ。
$\ep^{-1}$ より大きな自然数 $N$ が実数のアルキメデス性により存在するのだ

$n\geq N$ をとれば

<$>\def\no#1{|#1|}\begin{aligned} \no{\si(a_n)-x}&<\si(\dfrac 1n)\\ &\leq\si(\dfrac 1N)\\ &<\ep \end{aligned}<$>

より収束も示せたのだ

よって実数とコーシー列は互いに関連していることがわかったのだ。これによって有理コーシー列から実数が作れるとわかるのだ*10

この記事はこれでおしまいなのだ。デデキント切断とは、有理数を左右に分けることで実数を定義する、シンプルで強力な仕組みなのだ。そして実数の世界から有理コーシー列の性質がわかったように、有理数の世界も実数の観点を踏まえれば鮮やかに見えてくるのだ。さらに同じ実数の構成方法である有理コーシー列と同じものを指していることもわかったのだ。実数の構成と性質がわかったので、安心して実数を使うといいのだ

*1:有理数はとくに実数だからなのだ。$\ep\in\mathbb{Q},\ \ep>0$ は実数としても捉えられるから大丈夫なのだ

*2:$\min B$ は $B$ の元のなかで一番小さいもの、という意味なのだ

*3:定義のかわりになるものなのだ

*4:本当は主張内に注釈を書こうと思ったけど長くて断念したのだ

*5:もっと別の完備化にも使えるし抽象化すればもっと便利に使えるらしいのだ

*6:別に背理法じゃなくて対偶を示せばいいんだけど、取ってきたほうが見た目に楽だとおもったのだ

*7:$\min\B(x)$ があろうとなかろうと $b+1$ は最小限にならない、という意味なのだ

*8:$0$ から $1$ までの開区間 $\{z\in\mathbb{Q}\mid 0< z<1\}$ なのだ

*9:有理数列もこういう風に書いたりはするんだけど、混乱するかもしれないから今回は書かないのだ。収束の概念はちょっとめんどくさくなるけど一般の位相にまで及ぶのだ

*10:本当は同じ収束先を持つ2つの異なるコーシー列が同じ実数を定めるから、このコーシー列を有理数の世界で同一視($a_n-b_n$ が $0$ に収束すれば $a_n$ と $b_n$ は等しい、みたいな条件がつくはずなのだ)する作業が必要になるのだけど、それは割愛するのだ