正則性公理
正則性公理は集合論でちょこちょこ使えると便利なので、ここらで触れておこうと思うのだ
正則性公理
空でない集合 $X$ に対して $\exst{a\in X}\forany{x\in X}x\notin a$ なのだ
この形になじみがないけものも多いことと思うのだ。別表現として「$\in$ を(狭義半)順序としたときの極小元が存在する」という言い方ができ、これはわりとわかりやすいのだ
多くのけものが知っているのは以下の主張で、よく使われると思うんだけど、これはどちらかというと系なのだ
$a_0\ni a_1\ni a_2\ni\cdots$ となるような集合列 $(a_n)_{n\in\N}$ は存在しないのだ
$a_0\ni a_1\ni a_2\ni\cdots$ となるような集合列 $(a_n)_{n\in\N}$ が存在したとして、上の正則性公理から矛盾を導けばいいのだ
$X=\{a_0,a_1,a_2,\ldots\}$ とすれば、$\any a_n\in X\ (n\in\N)$ に対して $a_{n+1}\in a_n$ だから正則性公理に矛盾するのだ
だから正則性公理を使って包含関係にループ構造が現れたら矛盾、とするのはいつでも認められるのだ。$x\in x$ とか、$n\in m\in n$ とか……
後者が正則性公理と同値になる条件
さらに、従属選択公理を仮定すればこれが正則性公理と同値であることが示せるのだ:
従属選択公理
空でない集合 $X$ とその上の二項関係 $R$ が「$\forany{x\in X}\exst{y\in X}xRy$」を満たすとき、$\forany{n\in\N}x_nRx_{n+1}$ となるような $(x_n)_{n\in\N}$ が存在するのだ
従属選択公理は選択公理から証明できる「弱い公理」であることが知られているんだけどそれは割愛するのだ。大体選択公理と同じようなものだと思っておけばいいのだ
従属選択公理を仮定すれば以下は同値なのだ:
- 空でない集合 $X$ に対して $\exst{a\in X}\forany{x\in X}x\notin a$
- $a_0\ni a_1\ni a_2\ni\cdots$ となるような集合列 $(a_n)_{n\in\N}$ は存在しない
$1\Rarr 2$ はすでに示したから、$2\Rarr 1$ を示せばいいのだ
$1$ を満たさない集合、すなわち $\forany{x\in X}\exst{y\in X}x\ni y$ となるような $X$ を持ってくるのだ。このとき従属選択公理で $xRy\colonLrarr x\ni y$ とすれば $\forany{n\in\N}x_n\ni x_{n+1}$ となるような $(x_n)_{n\in\N}$ が存在するので、$2$ が否定されたのだ
正則性公理があるとほんの少しだけ、うれしいのだ
正則性公理は「ないと数学が出来ない」類いのものではないのだ。ちょっと煩雑になる程度なのだ
正則性公理があると集合論での順序対 $(a,b)$ の表現が $\{\{a\},\{a,b\}\}$ から $\{a,\{a,b\}\}$ に簡略化できたり、順序数の定義が妙に簡潔になったりして、証明がぐんと楽になるスパイスみたいな公理だと言えるのだ
普通の数学をする上では正則性公理を仮定して問題ないことが知られているのだ
公理的集合論で空集合から構成した集合は正則性公理を満たすことが証明されているし、空集合から構成してない集合が突如として現れることはないから正則性公理を普段から使っても問題がないのだ
証明したかったんだけど置換公理が難しすぎたから今回はパスなのだ。そのうち追加するかもなのだ
……無限公理から取ってきた集合は $\N$ しか使わないから大丈夫なところありそうなのだ