集合
集合論をわかりやすく、かつ厳密にやっていきたいのだ。集合論は何をするにも必要になるのだ
できないのだ😢
集合論は数学の中で基礎の基礎なのだ。だから色々な数学者が真面目に考えた結果、厳密な集合論はとてもとても難しいものになってしまったのだ。最初からそれを始めようとすると誰も集合論ができなくなるのだ
ここではその集合論にいくつかの仮定を付け加えてわかりやすくしたものを扱うのだ
記法
以下集合論に限らず数学をするのに必要な記号なのだ
- $a\colon A$
- 「$a$ は $A$」くらいの意味なのだ。「$x:$ 実数」なら「$x$ は実数」「$x$ が実数」のように捉えるのだ
- $A\coloneqq B$
- 「$A$ を $B$ と定義する」という意味なのだ。例えば「$f(x)\coloneqq x^2$」のように書くのだ。今まで全部 $=$ で書いてきたと思うけれど、これからは等しい意味の $=$ と 定義するという意味の $\coloneqq$ を使い分けるのだ。「$B\eqqcolon A$」とも書くのだ
さらに 命題 よりいくつかの記法を導入するのだ
集合
よく言われるのは「誰が見ても中身がはっきりわかる集まり」なのだ。例えば、自然数の集合 $\Bbb{N}\coloneqq\{0,1,2,3,4,\ldots\}$ などは誰が見ても*1中身がはっきりわかるから集合なのだ
基本的にさっきの $\Bbb{N}$ のような直接表記以外に $\{x\mid x$ は $4$ でわりきれる自然数 $\}$ のような形の間接表記を認めるようにすれば人間が思いつく「誰が見ても中身がはっきりわかる集まり」をほとんど全て書き表せるのだ。ここで $x$ はどの集合の元でもなくて、単なる文字なのだ
ここで $x\in X$ と書いて「$x$ が $X$ に含まれる」ことを表し、「$x$ は $X$ の元」とも読むのだ。例えば $1\in\Bbb{N}$ なのだ
また、$x\notin X\colonLrarr\lnot(x\in X)$ なのだ。例えば $\frac 12\notin \Bbb{N}$ なのだ
間接表記は命題関数で一般化できるのだ。$p(x)$ を命題関数とすればすべての $a$ にたいして $a\in\{x\mid p(x)\}\Lrarr p(a)$ としてよいのは見ればわかると思うのだ。$E\coloneqq\{n\mid n$ は偶数 $\}$ で $m\in E$ だったら $m $ が偶数になるのは当たり前に思えるのだ
「中に何があるか」だけを気にする
のだ。
同じものがいくつあるかは気にしない
$\{5,5,5\}=\{5,5\}=\{5\}$ のようになるのだ。集合の中にいくつ $5$ を書いても個数関係なしに同じ集合として解釈されるのだ
順番は気にしない
$\{0,1,2,3\} = \{3,2,1,0\} = \{1,3,2,0\}$ のように、どれがどの順番で入っていても気にしないのだ。おんなじ集合なのだ
集合の集合も自由に考えていい
$\Bigl\{0,\{0\},1,\bigl\{\{1,2\},3\bigr\},4\Bigr\}$ なんてのも考えていいのだ。集合は自由なのだ
簡単にやっても大丈夫なのだ😆
間接表記をいつでも認めると、矛盾した集合が作れちゃうのだ。集合論が難しくなった理由はここにあるのだ
$A\coloneqq\{X\mid X$ は集合$,\ X\notin X\}$ を考えてみるのだ。ここでさっきの $a\in\{x\mid p(x)\}\Lrarr p(a)$ を思い出し、$p(x):\ x$ は集合$,\ x\notin x$ とするとこれが間接表記であるとわかるのだ
$A$ そのものが $A$ に入るか を考えると:
<$>\begin{aligned} A\in A&\Lrarr p(A)\\ &\Lrarr A\notin A \end{aligned}<$>となるのだ。結果を見ると、$A\in A\Lrarr A\notin A$ となって明らかにおかしいことがわかるのだ……
この恐ろしい問題は「集合全部の集合」みたいなとっても大きな集合を考えると出てきちゃうのだ。それはじゃんけんに最強の手を加えたらちゃんとした勝負にならないのと似ているのだ。でも、ちゃんと考えて十分小さい集合だけ扱ってればこの問題は回避できることが知られているし、これから行う集合の操作で上のような大きい集合が作られることはないので安心してほしいのだ
基本的な集合
あとはよく知られている集合として $\Bbb{R}:$ 実数の集合$,\ \Bbb{C}:$ 複素数*2の集合を認めるのだ
これらの存在が矛盾を導くことはない*3から存分に使うといいのだ
また、直接表記による集合も認めるのだ。$\{0,1\}$ とか、$\{\{0\},\ \{1\},\ \{2\}\}$ は自由に考えていいのだ。また $\empty\coloneqq\{\}$ としておくのだ
直接表記は間接表記で $\{a,b\}=\{x\mid x=a\lor x=b\}$ のように書けるから、これを認めるということなのだ
演算と関係
これらの集合にも演算が必要なのだ! 演算子を定めて思考も楽ちんなのだ。この演算だけをしていれば矛盾が導かれることもないのだ。以下 $A,B,C,\ldots, X,Y,Z$ は集合なのだ
和集合
$A\cup B$ で表し、集合をくっつけたものを表すのだ。$\{1,2,3\}\cup\{3,4,5\}=\{1,2,3,4,5\}$ なのだ。間接表記で定義すれば
なのだ
共通部分
で表し、集合の同じ部分を表すのだ。$\{1,2,3\}\cap\{3,4,5\}=\{3\}$ なのだ
部分集合
任意の命題関数 $p(x)$ に対して
$\{x\in A\mid p(x)\}\coloneqq\{x\mid x\in A\land p(x)\}$ の形の集合を許すのだ
$A\coloneqq\{1,2,3,4,5\}$ とすれば $\{x\in A\mid x$ は偶数$\}=\{2,4\}$ なのだ
包含関係
こういう「部分集合である」みたいな性質を表す記号があるとうれしいのだ。「含まれる」を性質のよい表現に直せるといいのだ。
$A\subset B\colonLrarr \forall x,\ x\in A\Rarr x\in B$ とし、「$A$ は $B$ の部分集合」と読むのだ
このように集合 $A,B$ の包含関係は $x\in A$ と $x\in B$ という命題の関係で表せるのだ
例えば $\{0,1\}\subset\{0,1,2\}$ だし、$\Bbb{N}\subset\Bbb{Q}$ のような命題が証明できるようになるのだ
ここでいくつかの簡単な命題を証明してみるのだ:
「$\forall x\in A\cap B,\ x\in A$」を証明すればいいのだ
$\forall x\in A\cap B$ にたいして、その定義より $x\in A\land x\in B$、従って $x\in A$ なのだ
同じように「$\forall x\in A,\ x\in C$」を示すのだ
$\forall x\in A$ をとるのだ。$A\subset B$ の定義、$\forall y\in A,\ y\in B$ を適用すると $x\in B$ なのだ
さらに $B\subset C$ より同じことが言えて $x\in C$ なのだ
等号
さっきの包含関係を使うと $A=B\colonLrarr A\subset B\land B\subset A$ とできるのだ。左右の包含関係が言えれば集合が等しいことが言えるのだ
これもより簡単な命題として $A=B\Lrarr(\forall x,\ x\in A\Lrarr x\in B)$ になることがわかるのだ
差集合
$\{1,2,3\}\setminus\{3,4,5\}=\{1,2\}$ なのだ
難しい集合の演算
べき集合
$A$ のべき*4集合として $2^A\coloneqq\{X\mid X\subset A\}$ を定義するのだ。これは「$A$ の部分集合全体の集合」で、「集合全体」より中身が少ないから大丈夫なのだ。$A$ よりちっちゃい集合全部だからかわいいもんなのだ
ためしに具体例として $\{0,1,2\}$ のべき集合を計算してみると、
<$>2^{\{0,1,2\}}=\{\empty,\ \{0\},\ \{1\},\ \{2\},\ \{0,1\},\ \{1,2\},\ \{2,0\},\ \{0,1,2\}\}<$>になるのだ。なんか大丈夫そうだなーって直感がわいてくれるとうれしいのだ
直積集合
なのだ。ベクトルのように、元を並べたものの集合を認めるのだ。別に実数だけではなく別の集合の積も考えてよくて、例えば
<$>\begin{aligned} \{1,2,3\}\times\{3,4,5\}=\{\ &(1,3),\ (1,4),\ (1,5),\\ &(2,3),\ (2,4),\ (2,5),\\ &(3,3),\ (3,4),\ (3,5)\ \} \end{aligned}\\\begin{aligned} \{0,1,2\}\times\{\{0\},\{1,2\}\}=\{\ &(0,\{0\}), (0,\{1,2\}),\\ &(1,\{0\}), (1,\{1,2\}),\\ &(2,\{0\}), (2,\{1,2\})\ \} \end{aligned}<$>なのだ。集合の組も考えていい、というのが面白いところなのだ
また、$(a,b)=(c,d)\Lrarr a=c\land b=d$ が成立するのだ
例えば、$(a,b)=(1,2)$ なら $a=1,\ b=2$ なのはわかると思うのだ。それに $(a,b)\in\Bbb{N}\times\Bbb{R}$ だったら $a\in\Bbb{N},\ b\in\Bbb{R}$ なのは直感的だと思うのだ
それではもっと難しい話をするのだ。$(a,b)$ ですらもさっきの集合の演算だけで書けてしまうし、先ほどあげた命題 $a\in A\land b\in B\Lrarr(a,b)\in A\times B$ は証明できるのだ。読みたい人が読めばいいけど、一応今までの言葉で読めるはずだから読んでみてほしいのだ:
厳密な定義
$\forall a,b$ に対して $(a, b)$ を集合の言葉で書いてみるのだ
重要な性質は $(a,b)=(c,d)\Lrarr a=c\land b=d$ で、これをみたすものを順序対というのだ
色々な定義があるけど、ここでは $(a,b)\coloneqq\{a, \{a,b\}\}$ と定めるのだ。$\{a,b\}$ でいいじゃないか、って思うかもしれないけど $1\ne 2,\ \{1,2\}=\{2,1\}$ だということを思い出すとダメなのがわかると思うのだ
この定義なら $(a,b)=(c,d)\Lrarr a=c\land b=d$ が成立するのだ:
任意に $a,b,c,d$ をとるのだ。$a=c\land b=d\Rarr(a,b)=(c,d)$ はすぐにわかると思うのだ。逆を示すのだ
まず、$a\ne\{a,b\},\ c\ne\{c,d\}$ なのだ。さっきの構成を使って無限に入れ子になった集合が作れないのが直感的にわかるからそれで妥協してほしいのだ。正則性公理っていうのだ
$a\ne c$ と仮定して矛盾を導くのだ
$a\in\{a,\{a,b\}\}=\{c,\{c,d\}\}$ より $a=c\lor a=\{c,d\}$ で、仮定より $a=c$ は消えて $a=\{c,d\}$ なのだ。同じようにして $c\in\{a,\{a,b\}\}$ から $c=\{a,b\}$ を得るのだ
これを整理すると $a=\{\{a,b\}, d\}$ となって矛盾したのだ。よって $a=c$ なのだ
$\{a,\{a,b\}\}=\{c,\{c,d\}\}$ を $\{a,\{a,b\}\}=\{a,\{a,d\}\}$ と書き換えてよいのだ。$\{a,b\}\in\{a,\{a,b\}\}=\{a,\{a,d\}\}$ より $\{a,b\}=a\lor\{a,b\}=\{a,d\}$ となるけど、$a=\{a,b\}$ はありえないから $\{a,b\}=\{a,d\}$ なのだ
$a=b$ か $a\ne b$ かで場合分けするのだ
$a=b$ のとき、$d\in\{a,d\}=\{a,b\}=\{a\}$ だから即座に $d=a=b$ なのだ
$a\ne b$ のとき、$b\in\{a,b\}=\{a,d\}$ より $b=a\lor b=d$ で、$a\ne b$ だったから $b=d$ となって証明できたのだ
では、$\forall a\in A,\ b\in B$ に対して $(a,b)$ 全体の集合を構成してみるのだ。べき集合とか部分集合とかで書けちゃうとうれしいのだ
$\{a,\{a,b\}\}$ は、$A$ の元 $a$ と $A\cup B$ の部分集合 $\{a,b\}$ からなるのだ。ここでべき集合の定義を見ると $\{a,b\}\in 2^{A\cup B}$ であることがわかるのだ
よって $\{a,\{a,b\}\}$ は $A\cup 2^{A\cup B}$ の部分集合、すなわち $\{a,\{a,b\}\}\in 2^{A\cup 2^{A\cup B}}$ であることがわかるのだ。これらを全部持ってきて集合にすればいいから、
で積集合が定義できるのだ
この定義なら $a\in A,\ b\in B$ で $(a,b)\in A\times B$ となるのも当然なのだ。$(a,b)\in\in 2^{A\cup(2^{A\cup B})}$ であることはすでに上で示したのだ
ここで $\Bbb{N}\times\Bbb{N}\subset\Bbb{Q}\times\Bbb{Q}$ であることなどが証明できるのだ:
$\forall x\in\Bbb{N}\times\Bbb{N},\ x\in\Bbb{Q}\times\Bbb{Q}$ を示せばよいのだ
$\forall x\in\Bbb{N}\times\Bbb{N}$ はその定義より $\exist n\in\Bbb{N},\ m\in\Bbb{N}\st x=(n,m)$ だから、この $n,m\in\Bbb{N}$ は自由に使っていいのだ
ここで $n,m\in\Bbb{Q}$ であることに注意すると、$x=(n,m)\in\Bbb{Q}\times\Bbb{Q}$ がわかるのだ。$x$ は任意だったから示せたのだ
成り立つ性質たち
空集合の性質
空集合 $\empty$ と任意の集合 $A$ について次が成り立つのだ:
- $\empty\subset A$
- $\empty\cup A = A$
- $\empty\cap A = \empty$
- $\empty\setminus A=\empty$
- $A\setminus\empty=A$
めんどくさいから $\forall x$ は省略するのだ。また $x\in\empty \Lrarr \mathrm{F}$ (常に偽) であることに注意するのだ
<$>\begin{aligned} x\in\empty&\Lrarr\mathrm{F}\\ &\Rarr x\in A&\therefore\ \empty\subset A\\ \\ x\in\empty\cup A&\Lrarr x\in\empty\lor x\in A\\ &\Lrarr \mathrm{F}\lor x\in A\\ &\Lrarr x\in A&\therefore\ \empty\cup A = A\\ \\ x\in\empty\cap A&\Lrarr x\in\empty\land x\in A\\ &\Lrarr \mathrm{F}\land x\in A\\ &\Lrarr \mathrm{F}&\therefore\ \empty\cap A = \empty\\ \\ x\in\empty\setminus A&\Lrarr x\in\empty\land x\notin A\\ &\Lrarr \mathrm{F}\land x\notin A\\ &\Lrarr \mathrm{F}&\therefore\ \empty\setminus A=\empty\\ \\ x\in A\setminus\empty&\Lrarr x\in A\land x\notin A\\ &\Lrarr x\in A\land \lnot\mathrm{F}\\ &\Lrarr x\in A\land \mathrm{T}\\ &\Lrarr x\in A&\therefore\ A\setminus\empty=A \end{aligned}<$>これを見て $\mathrm{F},\ \lor,\ \land$ の関係と $\empty,\ \cup,\ \cap$ の関係が似ているなーと思ったけものがいたらとてもするどいのだ
矛盾がでちゃうから $\mathrm{T}$ のような集合は存在しない(なんでも含むなんてダメなのだ)んだけど、$\cup,\ \cap$ では $\lor,\ \land$ と同じ性質が成立してくれるのだ:
交換則
$A\cup B=B\cup A,\ A\cap B=B\cap A$ などは同じように見ればわかると思うのだ
結合則
$(A\cup B)\cup C=A\cup(B\cup C)$ なのだ:
ここでも $x\in$ を付け足すことで命題の話に言い換えられたのがわかると思うのだ
$(A\cap B)\cap C=A\cap(B\cap C)$ も同じ手順で証明できるのだ。演習問題にしておくのだ
分配則
$A\cap(B\cup C)=(A\cup B)\cap(A\cup C)$ なのだ:
$A\cup(B\cap C)=(A\cap B)\cup(A\cap C)$ も同じように言えるのだ
ド・モルガンの法則
命題でのド・モルガンは $\land,\ \lor,\ \lnot$ の関係だったけど、一般に集合の $\lnot$ は存在しないのだ
ある集合 $X$ を文脈から定めて $X\setminus A$ を $A^\complement$ って書いたりすることがあって、これが $\lnot$ に相当するのだ。$X$ を用意しないと使えないから十分注意するのだ。これを踏まえると:
- $(A\cup B)^\complement=A^\complement\cap B^\complement$
- $(A\cap B)^\complement=A^\complement\cup B^\complement$
が成立するのだ。上だけ示すのだ。まず $\forall x$ をとるのだ:
別に $A^\complement$ とか置かなくても任意の集合に対して $A\setminus (B\cup C)=(A\setminus B)\cap(A\setminus C)$ だったりすることはわかるはずなのだ
積の和集合と共通部分
$A\times (B\cup C)=A\times B\cup A\times C$ がなりたつのだ。$(\exist x\st p(x)\lor q(x))\Lrarr(\exist x\st p(x))\lor(\exist x\st q(x))$ に注意するのだ:
$A\times B\cap C\times D=(A\cap C)\times (B\cap D)$ なのだ:
$A\times B\cap C\times D\subset(A\cap C)\times (B\cap D)$ を示すのだ
$\forall x\in A\times B\cap C\times D$ をとるのだ。$x\in A\times B$ より $\exist a\in A,\ b\in B\st x=(a,b)$ なのだ
このとき、$(a,b)=x\in C\times D$ より $a\in C,\ b\in D$ なのだ。よって $a\in A\cap C,\ b\in B\cap D$ すなわち $x\in(A\cap C)\times (B\cap D)$ なのだ
次に $(A\cap C)\times (B\cap D)\subset A\times B\cap C\times D$ を示すのだ
$\forall x\in(A\cap C)\times (B\cap D)$ をとるのだ。$\exist a\in A\cap C,\ b\in B\cap D\st x=(a,b)$ なのだ
このとき $a\in A,\ b\in B$ より $x=(a,b)\in A\times B$、同様に $x\in C\times D$ なのだ
よって $x\in A\times B\cap C\times D$ となって示せたのだ
さらに発展的な集合
一般の和集合
集合の集合 $X$、例えば $\{\{1,2\},\{2,3\}\}$ などに対して $\bigcup X\coloneqq\{x\mid\exist A\in X\st x\in A\}$ の形の集合を認め、和集合と呼ぶのだ
なんかちょっと難しそうに感じるけど、実際の集合で考えてみれば問題がないことがわかるのだ
例えば、$\{A,B\}$ の和集合は
<$>\begin{aligned} \bigcup\{A,B\}&=\{x\mid \exist U\in\{A,B\}\st x\in U\}\\ &=\{x\mid x\in A\lor x\in B\}\\ &=A\cup B \end{aligned}<$>で、今までの和集合と同じになるのだ
もちろん同じようにして $\bigcup\{A,B,C\}=A\cup B\cup C$ なのだ
問題は無限集合の和集合なんだけど、それもわかりやすい結果になるのだ
例えば、$\bigcup 2^\N=\N$ なのだ:
$\forall x\in\bigcup 2^\N$ をとるのだ。このとき、$\exist A\in 2^\N\st x\in A$ なのだ
$2^\N$ の定義より $A\subset\N$、とくに $x\in\N$ なのだ。よって $\bigcup 2^\N\subset\N$ なのだ
次に $\forall x\in\N$ をとるのだ。このとき、$x\in\N\in 2^\N$ だから $x\in\bigcup 2^\N$ で、$x$ は任意だったから $\N\subset\bigcup 2^\N$ なのだ
両方の包含関係が言えたので $\bigcup 2^\N=\N$ なのだ
直感的には $\{\empty,\ \{0\},\ \{1\},\ \{2\},\ \ldots,\ \N\}$ みたいなものを全部足し合わせたら、$\empty\cup\{0\}\cup\{1\}\cup\cdots\cup\N=\N$ になりそうだなーって思えるのだ
一般の共通部分
同じように $X$ に対して $\bigcap X\coloneqq\{x\mid\forall A\in X,\ x\in A\}$ が定義できるのだ。今度も同じように $\bigcap\{A,B\}=A\cap B$ だから安心してほしいのだ
$\bigcap 2^\N=\empty$ なのだ。それは $2^\N=\{\empty,\{0\},\ \ldots\}$ の最初が $\empty$ になっているから直感的にわかると思うのだ
有限直積集合
で $n$ 個の集合の直積が定義できるのだ
もちろんあってほしい性質として
$(x_1,x_2\ldots,x_n)=(y_1,y_2,\ldots,y_n)\Lrarr x_1=y_1\land x_2=y_2\land\cdots\land x_n=y_n$ は成り立っているのだ。数学的帰納法で証明できるのだ:
$n=2$ の時は言わずもがななのだ
$n=k- 1\geq 2$ で成立したとすると、このとき
<$>\begin{aligned} &(x_1,x_2\ldots,x_k)=(y_1,y_2,\ldots,y_k)\\ \Lrarr\ &((x_1,x_2\ldots,x_{k -1}),x_k)=((y_1,y_2,\ldots,y_{k -1}),y_k)\\ \Lrarr\ &(x_1,x_2\ldots,x_{k -1})=(y_1,y_2,\ldots,y_{k -1})\land x_k=y_k\\ \Lrarr\ & x_1=y_1\land x_2=y_2\land\cdots\land x_k=y_k \end{aligned}<$>より $n=k$ でも成り立ったから数学的帰納法より $n\geq 2$ で証明できたのだ
でもこの定義にはちょっと納得のいかないところがある気がするのだ。$(A\cup B)\cup C=A\cup(B\cup C)$ だから計算する順番を入れ替えてもいい、みたいな法則がここでははたらかないのだ
どう考えても $\bigl(a,(b,c)\bigr)\ne\bigl((a,b),c\bigr)$ だし、$A\times(B\times C)\ne(A\times B)\times C$ なのだ。でも大体は有限直積集合は上で定義されるのだ
数学特有の考え方として「同一視」というのがあるのだ。構造や性質が同じものは同じだと扱っていい、という考え方なのだ。この場合は「全単射」によって同じものと見なしてよいことになるのだ。全単射はこれから写像でやるのだ